ハッピー☆ハネムーン

月島さんも、そんな昌さんに気づいてほんの少し苦笑いを零した。



「昌のような、元気で活発な子になって欲しくて。……ごめんな。勝手かもしれないけど…でも、少しでも昌を感じていたくて」

「……」


あたしは、聞いてはいけない事を聞いてしまっているような感覚になった。
きっと、それはここにいる誰もが思ってる事なんだけど。


だって……
だって、これは……まるで――



「本当に……あの時はごめん。
でも、俺はあの時……あの時、確かに昌を真剣に……愛し……」

「――宗次朗」



昌さんは、月島さんの言葉を遮るように言った。

そして。
一歩、また一歩と後退りするように彼から距離をとる。




「あたし、絶対……プロのピアニストになってやるから! 絶対なるから……。
その子にだけはピアノ……やらせないでよね!」





そう言った 彼女の笑顔は、すごく澄んでいて。
あたし達を照らす キラキラの太陽に溶けてしまいそうだった。







「さぁ! 行こ行こ! 買い物だぁ~」


あたし達の待つところへ戻って来ると、昌さんは両手をグーンと空に向かって伸ばした。



よかった……笑ってる。


戻って来た昌さんは、初めて出会った時のように笑っていて正直ホッとした。



――うん。だって、泣いてるんじゃないかなって思ったから。



約3年もの間。
恋焦がれて……忘れられずに追ってきた最愛の人。



その彼との――別れ。


悲しくないわけなんかないのに。




強いな…… 昌さんは。




< 76 / 100 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop