ハッピー☆ハネムーン
月島さんも、そんな昌さんに気づいてほんの少し苦笑いを零した。
「昌のような、元気で活発な子になって欲しくて。……ごめんな。勝手かもしれないけど…でも、少しでも昌を感じていたくて」
「……」
あたしは、聞いてはいけない事を聞いてしまっているような感覚になった。
きっと、それはここにいる誰もが思ってる事なんだけど。
だって……
だって、これは……まるで――
「本当に……あの時はごめん。
でも、俺はあの時……あの時、確かに昌を真剣に……愛し……」
「――宗次朗」
昌さんは、月島さんの言葉を遮るように言った。
そして。
一歩、また一歩と後退りするように彼から距離をとる。
「あたし、絶対……プロのピアニストになってやるから! 絶対なるから……。
その子にだけはピアノ……やらせないでよね!」
そう言った 彼女の笑顔は、すごく澄んでいて。
あたし達を照らす キラキラの太陽に溶けてしまいそうだった。
「さぁ! 行こ行こ! 買い物だぁ~」
あたし達の待つところへ戻って来ると、昌さんは両手をグーンと空に向かって伸ばした。
よかった……笑ってる。
戻って来た昌さんは、初めて出会った時のように笑っていて正直ホッとした。
――うん。だって、泣いてるんじゃないかなって思ったから。
約3年もの間。
恋焦がれて……忘れられずに追ってきた最愛の人。
その彼との――別れ。
悲しくないわけなんかないのに。
強いな…… 昌さんは。