ハッピー☆ハネムーン
「でも、それじゃあたしらの気持ち収まらないから。 ま、聞くだけ聞いてよ」
「ね?」と言って、バチンと片目をつぶって見せた昌さん。
一体なんなんだろう。
頭にいくつもの?マークを浮かべたあたしは、慶介を見上げた。
慶介も、あたしの視線に気づいて顔をこちらに向ける。
そして、昌さん達はお店の中央に足を進めた。
その先には――
…………ピアノ。
あたしは1番最初に昌さんを見かけた時の事を思い出した。
そうだ、昌さんはピアノを弾いていた。
その存在感は特別で……あたしは目を奪われたんだ。
そっか……聞くだけ聞いてってピアノの演奏の事なんだ。
昌さんが、あたし達のために弾いてくれるんだ。
真っ黒で大きなグランドピアノ。
それはとても美しくて、艶やかで。 光り輝いていた。
「……え?」
そのピアノの椅子に腰を落としたのは、アツシ君の方だった。
アツシ君……が?
アツシ君もピアノ弾けるんだ……。
そっと、ピアノの蓋に手を添えてゆっくりと開いていくアツシ君。
その姿をただ眺めていたあたしの隣で慶介が「あ」と小さく声を上げた。
「どうしたの?」
「やっとわかった」
「……なにが?」
キョトンとするあたしの顔を見て、1人納得したような表情の慶介。
なに?
なにがわかったの?