ハッピー☆ハネムーン

空港のロビーで、たくさん並んだ椅子に腰を下ろす。
この旅行でいろんな事があったな……

いっぱいヤキモチもやいちゃったけど、慶介の心の中も少し覗く事ができた。


そして、あたしはハワイでの色んな出来事を思い出してそっと呟いた。



「……あなたに最高の幸せを……か」



ボソボソと独り言のように言うあたしに、慶介は「どうした」と顔を覗き込んできた。

飛行機を待つ間、小さな手帳を取り出して帰ってからの予定を確認していた慶介。
ずっと睨めっこしていた手帳から顔を上げて、あたしの顔を不思議そうに見つめた。


「…うん、あのね」


あたしは少しだけ頬が赤くなるのを感じた。
こんな事を言って、また笑われないかな?

一呼吸置くと、あたしは口を開いた。


「アツシ君の演奏聞いててなんとなく思い出したの。……夢の事」


「夢?」


慶介は首を捻りながら、手にしていた手帳をぱたんと閉じた。



「あたし、今朝夢を見たんだ。 すごくあったかくて……体を包み込むようなそんな夢。 桃色のキラキラ光る雲のようなものに乗って、それはだんだん近づいてきて……」



記憶を辿るように口にする言葉。


その間も、あたしの胸はドキドキしていて。
なんだか勝手に鼓動は速くしていく。

慶介は、そんなあたしの言葉を黙って聞いてくれる。
笑うわけでも、
バカにするわけでもなくて、


―――真剣に。



「あたし、気づいたの。 その雲の上に乗っかる小さな……女の子の事」


「……」



そこまで言って、あたしは膝に置いていた手を頭の上にまとめている髪に伸ばす。



「……こっちに手を振ってたんだ。 なんだかそのうち会えるような気がしてあたし、すごく幸せな気持ちになったよ」



えへへ。と笑って、慶介を見上げる。
夢の話なんて……実際どうでもいいよね?

なんだか急に恥ずかしくなってきた。


だけど、次に慶介が言った言葉にあたしは息を呑んだ。


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