Advance
「な〜んだ・・・裏方や雑用なんだ・・・つまんねー!?」
マスターの気が収まった頃には少年は自分の仕事内容を把握したのか、少しつまらなさそうに呟いた。
「(はぁぁ〜・・・何だろう・・・このヒヤヒヤ感覚は・・・)」
僕は裂と言う少年と出会って数時間、得体の知れぬ冷汗を大量にかいた気がした。

『・・・けど、勿体無いな〜・・・コイツ、女だったら絶対、可愛いのに・・・』


「Σい!?///」
突然、少年の“心の声”が聞こえた。
それは僕の事を今だに「女だったら・・・」なんて破廉恥な事を考えているようだ。
「ぼ、僕は男だから!!!///」
「え?あ・・・ごめん・・・」
少年は自分の考えを見透かされて少し驚いている。
僕はハッとした。


いけない・・・


“力”の事は知られちゃ駄目だ・・・


「ごめんな、さっきは思わず・・・何て言うか・・・健全な男としての本能がままにだな・・・」
「・・・はっ?」
少年は僕に謝ってくる。
だが、微妙に説得力がない気もする。
と、言うより僕の“力”に気付いていない・・・と、言うか、全く心が読まれたと言う確信がないようだ。
それはそれで僕は安心した。
「と、とにかく・・・俺の事は・・・裂って呼んでいいから・・・だから・・・」
「う、うん・・・」
「今日から“トモダチ”になろう?」
「え・・・?」

戸惑った

“トモダチ”―――

僕にとっては初めて持つ関係―――


「お前の名前は・・・確か・・・」
「は、灰崎・・・秋人・・・」
「アキト・・・か・・・じゃあ、秋人、宜しくな☆」
僕の有無を聞かずに裂君はニカっと笑う。

その笑顔が僕の中にはない物だと実感し、僕は羨ましいと思うと同時にそれに嫉妬した。
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