身代わり姫
レオノーラは、懐かしいココアにある我が家を思い出しました。

珍しい花を探して駆け回ったあの日々は、そりゃあ生活は苦しかったけれど、こんなに窮屈ではありませんでした。

木になった果物をかじりながらリスの巣を見つけたり、甘い湖の水を飲んで寝ころんだり。

夜はお父さんたちと一緒に食事をして。


「楽しかったなあ」


レオノーラはぽつりと言いました。
いつか、いつの日か、あの家に戻れると思っていたのに。

もう、お父さんにもお母さんにも会えないんだ。

レオノーラの目の端に、じんわりと涙が滲みました。


帰りたい。

レオノーラはそう思いましたが、口にしてしまったらもっと辛くなると思って唇をぎゅうっと噛み締めました。

私はグラディス王女として暮らさなくちゃいけないんだから、思い出してはいけないんだわ。


目をごしごしとこすりました。


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