身代わり姫
「ふむふむ、分かったぞ!
しかし、幻の宝石を何故街の女が持っておるのだ?」


「そうなのでございます。女が持って参った物を見たのですが、確かに美しい宝石のようですが、私には妖精の涙がどうかなど分かりません」


年老いた執事は困ったように眉をひそめました。それを見て、領主も同じように眉をひそめました。彼だって、見たことなどある訳ありません。


「はてさて、それは困ったな」


ひげをしごきながら彼はうーん、と唸りました。
しばらくして、ぱ、と思いあたりました。


「そうだ。あの魔術使い様だったら分かるんじゃあないか? 魔術使いだったら見たことくらいあるだろう」


「おお、さすが旦那様ですな。ぜひ魔術使い様にお願いなさいませ」


領主はそうと決めると、魔術使い様が出て行ってしまっては大変とばかりに部屋を飛び出しました。


< 49 / 245 >

この作品をシェア

pagetop