緋色の奇跡
「本当に助かりました!!」

「いやいや、こっちこそ、家までペットボトル運んでもらって悪いね」


数分後、私たちはペットボトルを持って、彼の家の前まで来ていた

避難所ではなく、未だ自分の家にいるという彼の家は、どう見ても危ない気がしてしょうがない


「おじいさん、ここにいるって、絶対危ないと思うんですけど」


そう言って私が彼を心配する言葉を述べてみるのだけれど、彼は軽く笑うだけで全く相手にしようとしていない


「わしは、ここにいたいんだよ」


先ほどと同じ優しい笑顔で、私に笑いかける笑顔に、ますます彼に避難してもらいという気持ちが高まる


「でも、ここだと危ないですよ?」

「それでも、わしはずっとここで暮して来たんじゃ、ここにいたい。それにここにはサクラさんがおるからのぉ。おいては行けん」

「サクラさん?」


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