ネットワークライダー『ザイン』
「はあ、危ない所だった。あれはなんだったんだろう? しかしここは何処なんだ? 全く見当がつかない……哀神の奴め。肝心な事は何も解らないじゃないか」
瀬戸は装甲のままうろうろと暗闇を歩き回る。その足元はぼんやりと光った足跡で一杯になっていた。すると、
「ん? これは?」
足元に広がる光った足跡の中に、黄色地に赤で『HELP』と書かれたそれが浮かび上がっている。
瀬戸は戸惑いながらも踏んでみた。
「うむ……」
突っ立ったまま暫く様子をみていたが、何も起こらない。
「なんだよ。思わせ振りだなぁっ」 ダンダンッ
憎々しげに2回踏みしめると、床に六畳程のディスプレイが現れた。ダブルクリックをしなければいけなかったようである。
「おっ、ヘルプ画面が出た。どれどれ」
瀬戸の知りたかった事ばかりが記載されているその画面を貪るように読み進め、彼は疑問点を次々に解決して行く。
そして数々のアプリケーションをダウンロードする事で、様々な能力を得られる術を見出だしていった。
「最初に現れた銀色の魚はフィッシングウィルスだったのか。取り付かれても痛くも痒くもないウィルスだったんだ。その割には随分厳つい顔だったぜ。
しかし待てよ? 俺自体がソフトウェアな訳だから、口座番号等を釣られてしまう可能性も有るな。いかんいかん。雑魚ウィルスとは言え、油断は禁物だ」
色々なビューアーを取り込んだ瀬戸は、プログラム・コンフューザーで圧縮したアプリケーションを使ってネットワーク世界を一望出来るようになっていた。ネットワーク内には山や川、道路のような物やビルもある。
しかしやはりバックは暗闇で、色とりどりのフレーム画像が風景を形作っている。
「3Dリアル映像だとオーバーロードして重くなってしまうから、避けた方が良さそうだ。背景が黒でも充分事足りるしな」
そう言いながら跨がったのは、鴻上からも見せて貰ったネットライド・ウィジェットの『ペインキラー』だ。
口を開けた真っ白な竜が、フロントタイヤに覆い被さっているようなカウリングのデザインだが、全体的には流線型のシャープなラインで構成されている。
「実際目にしてみると、あんな小さな画像で見るより数段イカしてるぜ」
ファオン ファォォオン!
アクセルを捻ると高らかに排気音が轟く。ガソリンスタンドも何もないここで排気を伴う内燃機関が存在する筈もないが、演出としては面白い。
「ではでは、ならし走行と行きますか」
瀬戸はギアをローに蹴り込み、ゆっくりとクラッチを繋いだ。