氷の女王に愛の手を

GPF


頭の傷は縫いこそはしたが、骨などには全く異常がないそうだ。


すぐにでも退院できるかと思ったが、打ったところが悪いので念のためにと色々な精密検査を受ける羽目になり、結局退院できたのは二日後の朝だった。


その間、首から金メダルを下げた美優が叫びながら病室に乗り込んできたり、美優のコーチに無言で睨まれたり、協会の人たちからも注意力が足りないと注意をされたりと、さんざんな入院生活だった。


後から聞いた話、そこの病院のベッドはかなりの空きがあったため、入院患者の退院を引き延ばしているという噂が流れていることが判明した。


つまり、金づるにされたのだ。トホホ。


抜糸するまで過激な運動は慎むようにと注意され、第二戦のカナダ大会の出場は辞退した。


別に大丈夫だとコーチに言ったが、無理をするなと一喝されて撃沈。


そもそも残り四日でどう調整するのだと質問されて、俺は口を閉じるしかなかったのだ。


てなわけで、退院した足で日本に帰国したのだけど……。


「……なにこれ?」


自宅の自室にて、俺はとあるスポーツ新聞の記事を眺めていた。
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