氷の女王に愛の手を

そう言うとヤマトは「だったら次からはヘルメットをつけて滑るんだな」と、またクククと笑う。


帰り際に、その網みたいのをこれで隠せと、黒いニット帽をくれた。


俺の頭にはガーゼを押さえるために、リンゴを包むあの白い網みたいのを被っている。


こういう気遣いがさらりとできるから、ヤマトはモテるんだよなーとちょっと感じた。


ありがたくそれを受取る。しばらくはコイツを愛用することになるだろう。


今度会ったらなにかお礼をしなくちゃな。


そう心に決めて、壁にかけてある時計を覗く。


後一時間。


ちょっと早いけど、一階の居間に降りた。


もうすぐ、グランプリファイナルのテレビ放送が始まるのだ。






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