氷の女王に愛の手を

犠牲者


「聞いた? また新たな犠牲者が現れたらしいよ」


「そうなんだ。これで何人目?」


「いやー。この鶏の唐揚げのサクサク具合は絶品ですなぁ」


「て、人の弁当のおかず食ってんじゃないわよ!」


お昼休み。舞と奈々がなにやら真剣な話をしていたので、勝手に舞のお弁当から唐揚げを奪って食していたら、バレて頭上に空手チョップを喰らってしまった。


舞の形相はまるで般若。


そ、そこまで怒るなんて。なんて食い意地の張った子だ。


このままだと本気でボコボコにされそうだから、代わりに私のお弁当に入っていた春巻きを献上した。あぁ、私の春巻き~。


冷凍食品の春巻きと手作り唐揚げでは、唐揚げの方が価値が高いけど、舞は喜んでこの交渉に応じてくれた。


食えればなんでもいいのね。舞、恐ろしい子。


その光景を笑いながら暖かく見守る奈々。
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