氷の女王に愛の手を
一回転半

新たなコーチ


先生はコーチ業をやめたが、スケートクラブの経営はやめてはいない。


ここのスケートリンクの経営者と先生は旧友の中で、週に何度かクラブの生徒たちにリンクを解放してくれている。


先生はまだ入院しているが、近々退院できるとのこと。


それまで生徒の指導は先生の奥さんがやっていて、俺と美優が交代でその手伝いをしている。


今日は俺の番。まだ小学生の子供たちにスケーティングなどの基礎を教えている傍ら、ちゃっかり個人的な練習も行っていた。


そして今日は、俺の新しいコーチがやってくるのだ。


先生の元教え子らしく、先生自ら俺のコーチをしてくれるようにと頼みこんだのだと言う。


先生曰く「経験も実績もある素晴らしいコーチ」とのことだから、かなり信用がある人物なのだろう。


時計の針を意識する。


そろそろこのリンクに来るはずなんだが……。


少し休憩をとって水分補給をしていると、子供たちがなにやらざわざわと騒ぎ始めた。
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