氷の女王に愛の手を

「なんか変なおじさんがいる~」


最年少のアッコちゃんが不安な声色で呟く。


変なおじさん?


一瞬、志村けんの変なおじさんが思い浮かんでしまったが直ぐに振り払って、皆の視線の先に目をやった。


嗚呼、なるほど。


あれは変なおじさんだ。


スーツで大きなサングラスをかけ、なぜかチューペットを口に銜えている三十代後半の男。


そこはかとなくチョイ悪な雰囲気を醸し出しているが、チューペットで台無しだ。なぜ食ってる。


子供たちの保護者じゃないことは確かだから、おそらくあの人が―――。


「すいません、本田さんですか?」


チューペットおじさんに近づいて確認すると、その人物は「そうだけど」とぶっきらぼうに言い放ち「お前がタクか?」と尋ねてきた。
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