氷の女王に愛の手を
じゃあやはり、この人が俺の新しいコーチ。
「佐藤先生から聞いています。これからご指導よろしくお願いします」
頭を深く下げてあいさつをするが、本田コーチは一言も発さずジロジロと俺の体を舐め回すかの如く見つめてくる。
なんだこの人。本当に変なおじさん。
もっと明るい人かと想像していたから、ちょっと反応に困る。
「細いな……」
「え? なんですか?」
あまりにも小さく呟くから、コーチの言葉を聞き逃した。
もっとはきはき喋ってくれないと、子供たちの声でかき消されちゃうんですけど。
コーチはチューペットを食べ終わると近くにあったゴミ箱に捨てる。
そして、
「昨シーズンのショートプログラムを見せてみろ」