氷の女王に愛の手を

ジャンプの迫力がなく代わりに柔軟性をいかしたスピンで魅せる俺のスケートでは、自由で気まぐれで軽快な奇想曲はあまり合わないかもしれない。


それでもやりたい。どうしてもこれじゃなきゃダメなんだ。


だってこのフリープログラムは、


「それに、先生が昔滑った曲ですし」


先生に捧げたいから。


「先生ねえ……」


「駄目ですか?」


「いいんじゃない。その代りショートは俺が決める」


素っ気ないが、俺の我が儘を聞いてくれた。


だけど翌日、練習を始める前にコーチから何気なく渡されたCDとメモ用紙に書かれていた内容は、まるで報復だと思わんばかりのものだったのだ―――
< 68 / 231 >

この作品をシェア

pagetop