君とはじめて。〜契約恋愛〜
「奈緒!」
突然呼ばれる大きな声。その声に懐かしいものを感じ、目線をその声に向けた。
一気に顔がゆるみ今までにない笑顔で駆け寄った。
「お父様!」
一年ぶりと父との再会。
少しふっくらした体系に頑固そうに見えて実はとても温感な父の顔。
「美人になったなぁ」
満円の笑みで父が奈緒を抱きしめて静かにこういった。
「会いたかった…」
「奈緒もです…」
会えた安心からなのか涙腺が破れるかの用に目から涙が流れる。
…―パパ、会いたかった。
―…『パパ』…いつからそう呼ばなくなっただろう。
幼い頃から完璧な英才教育を受けてきた奈緒は物心つく前から『お父様』と呼ぶようになった。
それは自分の家が世界を動かしている、と自覚し始めてから。
周りの同じ身分の同級生は『お父様』と言っていたのを聞いて、恥ずかしくなったのだ。
自分は世界トップ企業の娘。父親や母親の身分をようやく理解したのか、両親に似合う身分にならなければ…と。
幼いながら決心したのだ。
それから奈緒は生活を全て変え、英才教育から習い事を学び、両親が恥じないよう努力し続けだ。
ただそれは自分のために決めたわけでもなかった。
父と母を喜ばせたい…
「自立」を幼いながらに体験し、人一倍努力をして強くなった彼女。
だが、本当は寂しくて、弱くもろい部分を持ち、懸命に強いと見せかけた「女の子」だった……。