ロマンス@南国
“喬にだって言えない悩みの一つや二つ、あるんじゃないの?”


 あたしは逆にそう考えていた。


 そしてあたしは素知らぬふりをしてベッドに入り、朝まで熟睡した。


 島の朝は一際早い。


 常夏の島は二月でも蒸し暑いし、もうじき日本にも春が来る。


 時間が経過し、あたしたちのバカンスも終わろうとしていた。


 音を立てるようにして休暇が終わり、あたしも喬も現実に引き戻される。


 せめて思い出作りにと、あたしはその日、島のスーベニアーズショップ――土産物店を見て回ることにした。


 あたしの誘いに彼が乗り、一日の予定が決まる。


 あたしは朝、洗面台で顔を洗っている喬に声を掛けた。


「身だしなみ、ちゃんとしてね」


 まるで念を押すかのように、あたしが言う。

< 94 / 119 >

この作品をシェア

pagetop