ほんとうに大切なもの
ゆくえ
待ちに待った給料日がやってきた。

明細を受け取るとすぐ”支給金額”の欄を確認。


  -これでまたユウヤに会える―

サヤちゃんも同じ考えをしていた。
水商売といういわゆる”副業”をしているわけだが、収入額は知れているようだ。

「メグちゃん、今度N&Yいつ行く?」

サヤちゃんはにこにこしながら私に話しかけてきた。
私も同じことを考えていたので、手帳を眺めた。


私たちは販売業をしているので、休暇は主に平日だ。
N&Yの定休日は日曜。 
なんとか、サヤちゃんと休暇の日を合わせてとることにした。


最近、ユウヤと連絡をあまり取っていなかったので、やっとメールができる。
私はよほどの用件がない限り自らユウヤへ連絡はしないと決めていたのだ。
それが深みに入らないための自分への防衛線だったからだ。

でも今回は久々にユウヤにメールをしよう。

―ユウヤへ。 
おはよう…ってまだ寝てるかな?
今度、ユウヤに会いに行きます。久々だから楽しみにしてるね。


なんて…かわいらしい女を気取ってみた。
ユウヤにしてみれば、そんなにお金を落とす客でもないしあまり相手にされてないだろうけど…メールの文章の中には書ききれないほど、喜びが滲んでいることはユウヤは気づいてないだろうな。


店でのユウヤはやさしい。
いつも、ニコニコしていて私のくだらない話を聞いてくれる。
時には相談にも乗ってくれるし、私が間違っていると思ったら怒ってくれる。
店の中ではちょっとした恋人の気分でいれる。
所詮、疑似恋愛。お金でのつながり。店外では赤の他人。
割り切らなきゃ・・・。


そんな風に考えている私の横でサヤちゃんは仕事中にも関わらず、ツカサに電話をしていた。
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