紺碧の地図
「…やだ、そんなの当然じゃない!」
ニーナが笑顔で私の頭を撫でる。
それだけで泣きそうになるなんて…私、どうしたんだろう。
涙を堪えながら、私は部屋に視線を巡らせた。
探している姿がないことに気づくと、嫌な予感で胸がざわつく。
「………ゼンは?」
レキとニーナの顔が強張った瞬間を、私は見逃さなかった。
ゼンの上着を持ったままの右手に、力が入る。
「………っ!」
ジークの家を出ようと走り出した私の腕を、誰かが掴んだ。
一刻も早く、ゼンに逢いたいのに。
もどかしさを感じながらも、私は振り返る。
「…ジーク、離して…」
私の腕を掴んでいたのは、表情を歪ませたジークだった。
ジークは躊躇いながらも、口を開く。
「多分…ゼンくんは、サンと一緒にいる」
その名前に、胸が大きく脈を打つ。