月影
「レナちゃんまで店に来てくれないとなると、俺も拓真も寂しいな。」
辛くも、ホストらしい顔をした台詞。
葵と別れてまで、聖夜クンが選んだものだ。
ずっと横で口を挟まずに居た拓真は、やっぱり苦笑いを浮かべていた。
「頑張ってね、仕事。
葵もさ、きっと頑張っちゃう子だから。」
別々の道だけど、と付け加えると、聖夜クンは言葉を飲み込むような顔をした。
そうまでしてお互いが選んだのなら、あたしみたいに半端なことなんてしてほしくはなかったのだ。
後悔したら、別れは意味を持たなくなる。
「レナ、送るよ。」
短くなった煙草を捨てた拓真は、そうあたしに言葉を掛けた。
だけども首を横に振り、彼へと顔を向ける。
「良い、ひとりでタクって帰る。」
「俺もタク呼ぶから。
ついでだし、やっぱ送らせて?」
不安げな拓真の顔に再度首を横に振り、あたしは聖夜クンを一瞥した。
そして視線を再び拓真へと戻し、少し迷ったが口を開く。
「うちで今、葵寝てんの。
なのに拓真に送ってもらうことは出来ない。」
「…そっか。」
「アンタはさぁ、聖夜クンの愚痴でも聞いてあげなよ。」
「…わかった。
また連絡するから。」
友達の彼氏の友達ってのは、本当に微妙な立場なのかもしれない。
何となく拓真とも気まずくて、じゃあね、の言葉を残し、あたしは彼らに背中を向けた。
気付けばもう、世界は朝焼けの色に染まっている。
辛くも、ホストらしい顔をした台詞。
葵と別れてまで、聖夜クンが選んだものだ。
ずっと横で口を挟まずに居た拓真は、やっぱり苦笑いを浮かべていた。
「頑張ってね、仕事。
葵もさ、きっと頑張っちゃう子だから。」
別々の道だけど、と付け加えると、聖夜クンは言葉を飲み込むような顔をした。
そうまでしてお互いが選んだのなら、あたしみたいに半端なことなんてしてほしくはなかったのだ。
後悔したら、別れは意味を持たなくなる。
「レナ、送るよ。」
短くなった煙草を捨てた拓真は、そうあたしに言葉を掛けた。
だけども首を横に振り、彼へと顔を向ける。
「良い、ひとりでタクって帰る。」
「俺もタク呼ぶから。
ついでだし、やっぱ送らせて?」
不安げな拓真の顔に再度首を横に振り、あたしは聖夜クンを一瞥した。
そして視線を再び拓真へと戻し、少し迷ったが口を開く。
「うちで今、葵寝てんの。
なのに拓真に送ってもらうことは出来ない。」
「…そっか。」
「アンタはさぁ、聖夜クンの愚痴でも聞いてあげなよ。」
「…わかった。
また連絡するから。」
友達の彼氏の友達ってのは、本当に微妙な立場なのかもしれない。
何となく拓真とも気まずくて、じゃあね、の言葉を残し、あたしは彼らに背中を向けた。
気付けばもう、世界は朝焼けの色に染まっている。