月影
「それじゃ嶋さんのメリットは何もないはずです。」


「あぁ、何もねぇよ。
けど昔から、そうやって遊ぶのが好きなんだよ、俺は。」


つまりはジルやギンちゃんやあたしの人生でさえ、彼にとっては“ゲームの一部”ということか。



「悪趣味ですね。」


「よく言われるよ。」


彼はアルコールを流し込んだ。


ムスクの香りが揺れ、嫌悪感を抱いてしまう。



「いつか刺されても知りませんよ?」


「それもよく言われるがな。
生憎俺は、この通り、まだ五体満足だ。」


弧を描くような、あたしを値踏みする瞳。


こんなのはただの言葉遊びであり、続けてたって意味はない。



「そろそろ帰っていただけますか?
あなたがあたしのお客だなんて知れたら、色々と面倒なんです。」


「ヤクザと関係してる女だ、って?」


「えぇ。
あたしのお客様は普通の方ばかりなので。」


にっこりと笑うと、彼はクッと喉を鳴らした。



「まだ答えを聞いてねぇぞ?」

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