テディベアは痛みを知らない
…‥・‥…・…‥・‥…



森山ユウは放課後、本当に私を迎えにきた。

ホームルームが終わった途端ドアを開け、私のところへ一直線に迫り、手を掴んできた。

「行こう」

「ちょ」

待ってよの一言に、三秒も要らない。

同じように、森山が私を拉致するのに三秒もかからない。

気が付いたらまた、足がもつれないようについて行くので、精一杯だった。

どうして、なぜ、彼は私を引っ張るのか。

部に貢献って、利用ってなんのことか。

彼が私に言った最初の言葉。

「病んでいるね」という音階が、頭の中で無意味にリピートされた。

「病んでいるね」「だから傷つける」「君に逢わせたいヤツがいるんだ」「病ん」「君に逢わ」「でいる」「だから傷つけ」「んでいるね」「たいヤツが」「病」「傷」「ヤツ」





ひとしきり、森山の言葉が再生された時にはもう、あの部室の前だった。

森山がドアを開ける。

私の視界に飛び込むのは、丸いテーブルと二脚の椅子。窓を飾る白いカーテン。そして高い棚に並び住まう、多種多様なテディベアたち。

今日はその部屋の中央に、壮馬が待っていた。

なんのつもりか、膝の上に包帯ぐるぐる巻きのテディベアを乗せて。
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