春の終わる日
 「なんで…君だったんだろう」



 なんで僕みたいな人間がのうのうと生きていて、彼女のような希望を抱いて一生懸命生きようとした人が死ぬのか。
 
 なんで僕みたいな人間を綺麗な人間だと見間違えさせたのが彼女なのか。



 疑問が自責になり僕の心を覆う。

 詩織さんはどんな気持ちで最期を迎えたのだろう。

 安穏と生きる僕にどんな想いを重ねたのだろう。




 見上げた空は柔らかい水色で春の匂いがする。

 何度も何度も僕は彼女の事を想い考えるがそれは僕の、他人の入り込める領域の事ではなかった。

 ただ一つ分かったことは、僕の春は終わってしまったということだけだった。 

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