春の終わる日
 僕がその名前を見たのを確認すると目の前の女性は「詩織の母です」と小さく呟いた。



 時折涙声が混じる言葉がぽつりぽつりとこぼれていく。


 彼女は、詩織さんはすごく稀な病気を患っていて余命幾ばくもない身だったそうだ。

 そして昨年末に、亡くなった。


 余命僅かな身であった事、年が明けるのを待たずして亡くなった事もショックだったがそれよりショックだったのは彼女の病状だった。



 彼女は、1日しか記憶を持てない病だったらしい。
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