魔王に忠義を
第一章
これからは自然環境を破壊する事なく、ドーラの産業と文明を発展させる為に尽力する。

汚竜討伐に貢献したドーラ貴族、ナハト・リアリーの言葉だそうだ。

まだ18かそこらの小娘でありながらそのカリスマ性はドーラの民を先導するには十分であり、事実富めよ造れよで公害など省みる事なく工場を稼動させていたこの地域も、最近では幾分空気が美味くなったらしい。

ドーラも救い、近隣の自然環境も救った。

まさしくドーラの英雄。

ナハト様々という訳だ。

そのドーラの工場地帯の中にある小さな酒場。

耳障りな音を立てて木製のドアが開く。

俺は黒い外套の埃を払いながら店に入った。

…店主はいる。

グラスを磨きながらカウンターから俺を一瞥する。

しかし言葉はない。

ドーラの店はどこだろうとこんなものだ。

無口、無愛想、頑固。

別段珍しくもなく、俺は気にせずカウンターに座った。

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