魔王に忠義を
噴き出す鮮血が、頬を、髪を、黒い外套を染める。

アキラが俺を斬り付ける瞬間、牙竜の刃ではない反対側の刃で斬ったのは、命までは奪わないというせめてもの情けだったのか。

何にしても最早反撃できるような傷ではなく、ブレードもすぐには使えない状態だった。

得物を落とし、地面に倒れ、俺は息を荒くする。

完敗だった。

やはり仮にも竜殺しと呼ばれる少年の強さは尋常ではなかったという事か。

目を閉じ、傷の痛みに耐える。

と。

「やれやれ」

耳元で声が聞こえた。

思わず見ると、俺のそばにあのハニワが姿を見せていた。

「貴方という男を見込んで、秘密結社はこの仕事を任せたんですがね…あんな年端もいかない少年一人仕留められないとは…貴方も堕ちましたね、Ⅵ番」

ハニワが首を掻き斬るような仕草を見せた。

「クビですよ、ヴァン・アルナーク。役立たずを庇ってやるほど、秘密結社は甘くありません」

その言葉を最後に、ハニワは姿を消した。

…何とも無様な最期だな。

倒れたまま苦笑いを浮かべる。

五つも年下の少年に敗北し、秘密結社にも見限られ。

俺はこんな通りの真ん中で野垂れ死ぬのか…。


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