魔王に忠義を
俺ははじめから捨て石だったという訳か…。

ギリ…と歯噛みする。

「ちょちょちょ!どうするのよⅥ番!」

楽天家のアイシャが慌てた。

「どうする、とは何がだ?」

「だって!魔王が復活しちゃうかもしれないのよ?世界がまた戦争になっちゃうかもしれないのよ?魔王と人間だけじゃない、国と国とかまた荒んで争い合うかもしれないじゃない!」

「……」

願ったりかなったりだ。

俺の復讐は達成される。

動乱の時代。

喧嘩っ早いファイアルが、ドーラに仕掛けてくれるのは理想的なシナリオといえる。

滅ぼし合え。

殺し合え。

そして…。

ふと、ナハトとアキラの顔が浮かぶ。

ナハトの危機に駆けつけたアキラ。

彼の助けを心待ちにしていたかのようなナハト。

信頼しあっていたファイアル人とドーラ人。

あの二人も、戦になれば迫害されるのだろうか。

愛し合っていたばかりに命を奪われた、俺の両親のように…。

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