魔王に忠義を
ライストを飛び立つ事一時間。

アイシャがフワリと大地に降り立つ。

「ふぅ…」

着地した彼女の額には玉のような汗が浮かんでいた。

風の魔法による飛翔はさすがに集中力を要するらしい。

人間二人を魔法により高速で飛行させるのだ。

それ相応の精神力を消耗する。

連続飛翔は一時間が限度なのだろう。

「アイシャ、少し休め」

俺は彼女に忠告する。

幸いライスト地域から離れ、ファイアル地域に入っている。

ガーディアンもここまでは来ていないだろう。

それに、運よくファイアルの街の一つも近くに見える。

あの街で休息をとるのもいいかもしれない。

「でも…いいの?」

アイシャが俺の顔を覗き込んだ。

「何だかヴァン、ファイアルとドーラにはいい感情を持っていないみたいだけど」

「……」

確かにそれは事実だが…。

「そうも言っていられないだろう」

俺は街へと歩き始めた。

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