魔王に忠義を
ファイアルの戦い方は実に単純明快。

常に全力の大振り。

つまり回避すれば大きな隙を作る。

それは絶望的なまでの隙。

炎の波を薙ぎ払われたネルスの隙も、俺に言わせれば致命的なものだった。

一気に懐に入り込む。

長い鞭がここでは裏目に出る。

「頂く」

上段からの刃を振り下ろそうとした俺は。

「甘いな」

ネルスの不敵な笑みに、瞬時、踏み込みを止めた。

同時に俺の胸板、皮一枚を薙ぐ鞭!

…鞭といっても様々なものがある。

革でできたオーソドックスなもの。

鞭の表面に棘を配した攻撃的なもの。

そして、乗馬や騎乗用の小竜に使用される短鞭。

まさに今、ネルスが片手に握っているものだった。

先程まで長くしなる鞭を振るっていた筈が、突然ネルスの手元で短く変化している。

「俺の鞭は間合いを選ばん」

再び長鞭に変化させながら、ネルスが見下したように言った。


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