魔王に忠義を
俺はその場にアイシャを残したまま、一歩踏み出した。

ネルスが気にいらなげに俺を見る。

「貴様も半分は我がファイアルの血を引いていると聞いたぞ…ならば火の民の優秀さと戦闘における圧倒的な優位はわかっていよう」

「違いない」

歩みを止める事なく俺は頷いた。

半分は火、半分は土。

そんな半端者だからこそ、迫害され、どちらの民にも受け入れられず、火も土も憎悪する歪んだ性根を持つに至った。

だから。

俺の心情を代弁するかのように、ブレードが咆哮する。

この刃は火と土を切り刻む為だけに振るう。

「燃やすしか能のない粗暴な民族が優秀?笑わせるな」

「…言い間違いでしたでは済まんぞ」

ネルスの表情が怒りに赤く染まった。




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