チャンドラの杯
 マザーが立ち上がった。
 シドは静かに俯き、それから今度はどういうわけか金属の筒を彼自身のこめかみに向けて指を動かした。

 パン、と四度目の音が響いた。

 シドの金色の髪を赤黒い液体が汚す。マザーは黙ったままシドを見ている。シドの体がぐらりと傾き、しかしすぐに彼が足を踏み出したので留まった。

「これでお互いの自己紹介は終わったね」とシドが言った。
 ぽこぽこと肉が盛り上がり、シドの頭から傷が消える。
「マザー、話をしようか」
「話をしに来た人のする真似じゃあないわね」
 マザーが口を開いた。小鳥の囀りのような、綺麗な声だ。
「まずはその『拳銃』をしまって下さいな。シオンをこれ以上怖がらせないで」
 僕は震えながらシドを見上げる。「失礼」と言ってシドは肩をすくめた。

「でも、マザー。あんたがシオンたちにやったことに比べれば、こんなのはごくごくささやかなことだと思うよ」

 僕にはシドが何を言っているのかよくわからなかったけれども、ともかくシドはマザーの言葉に従って、恐ろしい金属の筒を大人しく上着の下にしまい込んでくれた。
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