心 ―ハジマリノウタ―




私は黙ってリヴィアが運ばれて行った扉を眺めていた。


ジグが私を揺さぶって、視界が上下左右に動く。




「ユア、聞こえるか?

怪我をしているのか?」




最後に私の目に映ったのは、

力なく垂れる、リヴィアの白い手だった。


心感じるままに、歌っても

私にはリヴィアを助けられなかった。


私の目に、枯れたはずの涙が浮かぶ。


それは頬に落ち、

それから伝って顎からアスファルトへ。


まだ涙の止め方を知らない私は、

再び涙を流した。


私の異変に気が付いたのは、

リオとレイだった。



「ユアが、泣いてる?」


「それって…ユアに心が戻ってきた?!」




叫びあう2人の少年達。


私の異変に気がつき、ささやきあう人々。




「ユア、心が戻ってきたのかね?

リヴィアは…?」




私は、黙っていた。


黙ってただ、その血の痕を見ていた。



< 153 / 534 >

この作品をシェア

pagetop