心 ―ハジマリノウタ―
フェイクが帰って来たのは、
私がちょうど3冊目を読み始めた頃だった。
フェイクは何も言わずに、斜め横にある肘掛け椅子に
本をとって腰を下ろした。
私は何も言わなかった。
彼が何も言わなかったから。
それでも、少しすっきりしたような表情で
帰ってきたことは分かった。
それでも、きっと、
まだ答えは出ていないのだろう。
それならば、私はそのときが来るまで、
じっと待っている事にしよう。
それ以外、私にできることはないのだから。
手は差し出したまま。
彼が私にそうしてくれたように。