World of Game
“逃げなきゃ”

それだけが頭を支配し、皮肉にも恐怖が体の疲れを忘れさせてくれた。


小夜は走る。


足音からすれば男はゆっくりと歩いているはずなのに、恐ろしい速さで小夜に追いつこうとする。

後ろを見、相手との距離を確認しようとしたとき、小夜は壁に激突した。

「っつ…」


よく見ればそれは壁ではない。
扉だ。小夜は扉を開き、奥へと駆け込む。


部屋という部屋を駆け巡り、エレベーターの前にたどり着いた。
此れは今までよりも深くへといけるエレベーター。


近づく足音に怯えながら急いでそれに飛び乗り、ボタンがあるなかの一番下のものを押す。


エレベータはグングンと下がっていく。


少しでも体力を回復しようと床に座り込んだ。

必死で必死で、いつもなら嫌がる真空の圧迫感も感じない。


流石に足音はしない。


しかし、追いかけられているという感覚と耐えがたい恐怖で、男がもうそこに迫っているような気がしてならない。


エレベータは一番下。
地下20階に着いた。


そこに広がるのは今までと打って変わって大きなトンネルだった。

小夜はエレベータから転げ落ちるように降りてトンネルを進む。


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