World of Game
トンネルの奥には、大人一人が入れるほどの楕円形の乗り物がたくさん並んでいた。

小夜の記憶がよみがえる。
此処に連れてこられるときに見た、あれだ。


一番近くのそれのドアを開き、中へと乗り込む。

……ドォン!!


「!!!」


何かが落ちた音がした。
振り返ることも出来ずに小夜のの体はガクガクと震えた。


開いたままのエレベーターの中に足音の主がいた。


少女は震える体を抑え楕円形のものの扉を閉め、パソコンのキーボードのようなものに向き、すばやく打ち込み始めた。

ウィーン……

起動する音がする。すくなくとも動くことに小夜は安堵した。

「!」

足音の主はそれに気付き楕円形のものに歩を進める。

嫌……嫌、こないで…!

小夜の手は焦る。

楕円形のものがうっすらと光り始める。

男は初めて驚いた表情を見せ、小夜の乗る楕円形のものへ走り出した。


それをみた小夜が手を止め、怯えた表情を向け、小さく微笑んだ。


そして、ひとつのキーを

エンターキーを押した。


楕円形のものの光が強くなり、後方に細かい光の帯ができる。

光は明るさを増し、視覚はもう意味をなさない。

男の手がのびる。


あと少しで届く。
逃げるのを阻止しなければ!

男が広げた手を掴んだとき、光が最高潮に達した。


光が収まったとき男の手には、光の残像しかなかった。



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