白球ノート


去年の夏、県大会を3回戦敗退でこの野球部は甲子園への道を閉ざした。


まだ入部して間もない私たちは泣けなかった。


悔しさで溢れかえる涙をひたすら流す
3年生を見て、
いつか私たちもこうして泣くのかな、って話したよね。


3年生のマネージャーが、
「あとは安西さんと都築さんにまかせる」
って言いながら泣いてた。


その言葉に大丈夫かな?
って2人で首を傾げた。


でもすぐ後に私の手を握って、
頑張ろうって大きな声を上げるサオに勇気づけられたの。


選手が不安なとき、
一番最初に声を出すのはいつもサオ。


監督よりも、
控えの選手よりも先に
アルプススタンドから大きな声を出す。


その声は何処までも響いて、
グラウンドに立つ選手の耳に届く。


メガホンなんか必要ない。

澄んだよく通る声は、
遮る物のなくすぐに響く。


サオの横で私も声を上げるんだけど、
同じように選手に聞こえているのか不安だった。


「今のかおるの声、絶対届いたよ!だってピッチャーがボールださなくなったもん!」


満面の笑みで私の肩を揺する。


サオが隣りにいたから、
私はマネージャーとして今も頑張り続けてる。


大丈夫、
サオがいれば私はなんでも出来る!
そんな気分にさせてくれるんだ。




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