幸せの契約
「とにかくっ!
頭を上げてください。これは主人としての命令です。」


“主人として”“命令”



一番言いたくない言葉



でも
この二言が犬居さんに絶対の力を発揮する呪文…


ほら、


さっきまで床に擦り付いていた頭は今では私の目をしっかり捕えてる


ズキンズキン


心が軋む…

「かしこまりました。
しかし…このままでは…。」


まだ気が収まらないとでも言い出しそうな顔


「もうこの件については何も言わないで下さい。
私は気にしてないって言ってるんだから、犬居さんも気にしないこと!

いいですね?」



私はズイッと犬居さんに迫った



吐息がかかりそうでドキドキする


長いまつげがゆっくり上下に揺れた


漆黒の切れ長の瞳に写る私の顔

そしてゆっくり瞼を閉じる犬居さんは右手を胸に当てて頭を下げた

「承知いたしました。
マイロード。」



“マイロード”


“ご主人様”



主従関係が犬居さんを引き留める唯一の術なのに


それが
私の心を締め付ける
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