幸せの契約
選んだのはこの前買ったドレスの中でも一番のお気に入り


大きなリボンがついた桜色のドレス

髪は緩く巻いてアップにしてドレスと同じ色のコサージュを付ける


流行りのメイクをして
サテンのパンプスを履いた

「よし!」



部屋から出て階段の上に立った


ライトアップされたクリスマスツリーの下には

沢山のプレゼントと


焦げ茶色のベロアドレスを着た由香ちゃん

タキシードを着た番場さんと黒木さん



そして

燕尾服じゃない

漆黒のタキシードに身を包んだ犬居さんがゆっくり階段を上がってくる


カッコいい

いつもの燕尾服とは違う
洗練された上品さ


前髪をオールバックでまとめて

どこかの貴族みたい


私の前に来ると
犬居さんは片膝をついて
右手を差し出した


「僭越ながら、今宵は私がエスコートさせていただきます。」


ゆっくり
顔を上げる犬居さんの瞳が

私を捕えて
吸い込む


「鈴様、お手を…。」



そっと
犬居さんの手に左手を重ねた


「参りましょうか?
お姫様。」


悪戯にウインクする犬居さん


今夜は私

キュン死するかも


高鳴る鼓動を押さえて階段を降りた
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