幸せの契約
にしても…


一番気に入らないのは


私は向かい合うようにして座っている、すました顔をした執事を見た


今時…白手袋に黒の燕尾服なんて…


執事喫茶かっっ!
テレビドラマかっ!
漫画かっ!



って失礼


低所得者の私にはお手伝いさん、もとい執事なんてモノは頭に潜在しないのです


「鈴様?
どうかしましたか?」


切れ長の目が私を心配そうに見つめる


「いえ、別に…。」


目をそらす私
景色は住宅街を抜け市街地になろうとしていた


「お顔の色が優れませんが…。」


整った顔立ち
少し長めの黒い前髪が揺れる


「大丈夫です。
少し…色々ありすぎて、疲れただけです。」


ため息混じりに私は呟いた

「心中お察しします。
ですが、旦那様は鈴様の事を熱心にお考えになっておりました。そして何より、鈴様の幸せを考え…お力になりたいと。

私はそのお手伝いをするように、鈴様が不自由なく暮らせるように、心から仕えるよと申し使っています。」


形のいい薄い唇が
優しく微笑んだ



蔵之助さんは

どうして
そこまで私を心配してくれるんだろう



あかの他人なのに…
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