幸せの契約
静かに車が止まった


「到着しました。
鈴様、どうぞ。」



犬居さんがドアを開けてくれる


私は慣れない事ばかりで
ぎこちなく車を降りた


「今日からこちらが鈴様のお住まいになります。」


目の前に現れたのは
レンガ造りの塀に囲まれた
広い庭のなかに静かに建つ
二階建てのヨーロピアン風の大きな一軒家


私は唖然として

開いた口が塞がらなかった


“今までのアパートより少し広くなるだけですから。”


蔵之助さんの言葉が甦る



「ぁんのっっ…タヌキおやじ!!」


喰い縛るようにわたしは言う


「鈴様?
これは、旦那様と鈴様のお約束の中の一部です。どうぞ、落ち着いてください。」



犬居さんが静かになだめる


「中に入りましょう。
蜂蜜かブランデーで甘味をつけた、ホットミルクをお淹れ致します。
少しは落ち着きますよ。」


優しく微笑んで
私を木製の大きな玄関へ促した
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