幸せの契約
カウントダウンが巨大スクリーンに写し出されるなか



ステージから降りた私たちは


誰もいない会場の隅で

ゆっくり手を握った



「あ、イギリスには行っちゃうんですか?」


私の問いかけに犬居さんが微笑む


「執事協会に退会手続きをしに行きます。」



「侯爵令嬢に使えるって話は?」



「あれは…鈴様のお気持ちを知りたくて…嘘をつきました。」


顔には悪戯な笑み


もぅ!
ふくれる私の頭を撫でて
犬居さんが耳元で囁いた


「執事として鈴様の傍にいるのは限界だったんです。
…私も…一人の男ですから。」



意味深な発言と
頬に触れた唇


熱が上がる私を犬居さんは愛しく見つめてくれる





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