幸せの契約
ステージからそそくさと降りて隅に身を移す


周りの目が痛い


ボーイから差し出されたシャンパンを一気に飲んだ


すぐに替えのグラスを持ち半分空ける


「飲みすぎだよ。」



来た!


私が苛立つ最大の原因


「さっきは驚かして悪かったよ。」


私は大和さんを見ないようにした


「鈴?ごめん。
でも、俺も初めて公の場でスピーチすることになって、一人で緊張してたんだ。
だから
鈴を巻き込んだ。」


調子いいこと言って



「婚約者って発表したけど、俺はまた直ぐに海外に立つ。
だから、鈴の気持ちが決まるまで十分に時間はあるよ。

俺は鈴との婚約を破棄するつもりはないけど、最終的には鈴が決めていい。」



私の右手をさっと取った


「何する…の?」


素早く左手の薬指に小さなダイヤが入った指輪がはめられた


「何これ?
いりませ…。」


外そうとする私の手に大和さんの手が重なる


「受け取って。
あとで捨てたって構わないから、今日は黙って着けていてくれない?

俺からの婚約指輪だ。」



婚約指輪?!


そんなのますます受け取れない



無理矢理外そうとしてもがく私


「鈴っ!」


グレーの瞳に強く静止させられた


圧倒的な存在感と
魅力的な瞳



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