好き?



私はぼーっとしていた。
自分が今、どこへ向かって歩いてるのか、わからなかった。
ただ、ひたすら歩くだけ。
まるで、なにかを忘れるように。

気がつくと、昨日待ち合わせ場所だった、噴水の所にいた。



「あ…私、こんな遠い所まで来ちゃったんだ…」



ここになんか来たくないはずなのに。
来たら、昨日の二人の姿を、思い出してしまうのに。

また…泣いちゃうのに…


ピピピピピ。



「…携帯?誰??」



今度はメールではなく電話だった。
李亜以外には電話番号を教えてないはずなのに。

もしかして、李亜?

だったら…また、聞かされるのかな??
私は渋々ディスプレイを見る。

番号は、知らない番号。



「はい、もしもし?誰…ですか?」



不安な気持で電話に出た私とは反対に、電話をかけてきた相手は陽気な声で話しかけてきた。



「もしもし!俺!俺だよ!凛!」



この声、聞き覚えがある。



「光…?」

「そう!」

「あ、おはよう…?」



どうして電話番号を知っているのか。
どうして電話をかけてきたのか。
聞きたいことはたくさんある。

でも、今の私の気持ちじゃ、聞く気になれない。



「…その音。」

「え…?」

「その音、噴水の音だろ?」



私は後ろを振り返ってみる。
ちょうど噴水しているところだった。



「風邪気味って、嘘だったんだ?」

「…。」



声が怒ってる。
どうしよう。
嘘だって、ばれてる。



「嘘ついた代わりに、これから指定するところにきてよ。」

「…うん」



断る権利なんか私には無かった。

会って、きれても知らないよ?
うんざりだっていわれても、どうしようもないよ?

本当は、嫌われたくないから行きたくないけれど。

今、行くね。




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