スタートライン。
 もちろん、夫婦と言う表面的な形はあったから、私はあいつの性欲処理場と化した。無言で脱がされ股を強引に開かれ、1秒たりとも愛撫せず、力の限りに腰を振る。愛のあるキスも無くただただ私はまな板の上の鯉となり痛いのがばれない様に気持ちよくなっている振りをして声を上げた。

 いつかどこかの大臣がテレビを賑わせていた。


 『女は子供を産む機械。』


 私はそれを否定しない。まさに私がそうだったから。彼にとっては産まれた子供はゴミ同然だった。邪魔者扱いされた私の宝物はそれでも意味が解らずにあいつへ笑いかけていた。残酷だった。

 地獄絵巻は家をカバン1つで飛び出してからも続く。父親であることを完全拒否したあいつは、DNA鑑定と言うものを私と子供に要求した。ドラマの中だけの話かと思った。結果なんて、言うまでもない。あいつの子供に変わりはない。私は何のためにあいつと一緒になったのか。全ての出会いに意味はあると思っていた私に大きなクエスチョンマークがついた。なんで?究極の答えを私は超プラス思考で導き出す。『宝物に出会うために私はあいつと出会った。』究極。そうでも思わないとやってられない。メタボリックであろう体つき、8歳もの年の差、理想とかけ離れた家庭環境とタイプからかけ離れたあの顔。私があいつを憎む要素は日に日に増して行った。



 現在25歳の私。まさに今が旬。なのに、心は冷めていて刺激のない毎日に嫌気が差していた。ある日私はふと携帯電話を手にして、昔付き合った事のある、大輔と言う男に何気なくメールをした。大輔は1コ下の消防士。私が25年生きてきっと1番好きになれた男だ。今考えると私はきっと彼にSOSをメールと一緒に送信したんだろう。
 お付き合いをしてみた男性の数は大輔を入れて8人。男女の関係を持ったのは3人。残りの5人は手を繋ぐだけの健全なお付き合い。はっきり言って今の私に彼が居なければ私はとっくに女を捨て母親と父親の一人二役で生きていくことを決心し二度と女になることは無かっただろうと予測する。そんな私の身勝手な予測は彼の前ではもろくも崩れることになる。彼と話をしているだけで私はいとも簡単に女に豹変した。忘れていた女の感情を取り戻した。取り戻せたと言った方がいいのかもしれない。彼の隣はまさに天国だった。
  

 

 


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