スタートライン。
居場所

 例えば、日本人はあまり『愛してるよ』なんてさらっと言ってくれない。
 例えばそれが歌の歌詞にでもなっていたら、さらっと歌える人がほとんどだろう。


  
 言いたいことも言えなくなってしまった最近は頭の中で何を考えているのか、何を想っているのかそれさえも明確に言葉で表現するのが下手になってしまった。嫌な大人になってしまった。それなのに大切な人にだけは、貪欲にすべてを知りたくなってしまう。欲張りになってしまった。きっと愛だの恋だのに一生懸命憧れていたあの頃はきっと手を繋ぐだけでよかったのに。


 好きな人が居るとも言えなくなってしまった最近は、つかなくてもいい嘘に囲まれて苦しくなっている。だからといって暴露してしまう勇気も無ければそれを快く受け入れてくれる人材もいない。たった2人の秘密のようで、考え方一つで実は嬉くもある。2人だけの秘密。私と大切な人との秘密。時間が経って、私の身が軽くなった頃には暴露をしなければ一生2人が表沙汰になることは無い。そして表沙汰にしなければ、一生2人は一緒にはなれないんだ。いつ堂々と2人手を繋いで歩けるのか。いつ堂々と私の大切な人はこの人ですと言えるのか。きっとあと少し…。あと少しの辛抱なんだけれど、1日が24時間もある事を恨み、1ヶ月が30日もある事を憎みながら私は生きている。
 
 事実、私は現在離婚裁判中。妊娠はしていないが身は重い。大きな宝物を背負っているからだ。何があろうと男と二人で歩くなんて危なっかしくて出来たもんじゃない。いつどこで写真を撮られて、『浮気だ!』なんて言われるかわからない。誰かにいつも見られていると感じながら生活しているんだ。
 結婚生活3年目。別居生活2年目に入る。私の結婚生活は地獄絵巻にも似た様なものだった。結婚するや否や天と地がひっくり返ったように激変してしまったあいつを恐ろしいと感じながら過ごした1年間。宝物が居てくれたからまだ私は正気で居られた。私は旦那と呼ばないといけない人をちゃんと愛すことも出来ずに、どうやって家を出るかとばかり毎日、毎日考えていた。女になることもなく、私はずっと母親とお手伝いさんをしていた。
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