職場内恋愛





「真…思い出になんてしたくないよ…私。

だってまだ…こんなに好きなんだもん。


優作さんのこと…大好きなんだもん。

ホントは…別れたくなんて…なかったよ…」



私は幼稚園児のように声をあげて泣いた。

真はただ隣にいて私の本音を聞いてくれている。



「初めて…あんなに好きだ、って思える人に出会えたのに…

なんで…こんな思い、しなきゃいけないのかな…


こんなに辛いなら…優作さんのこと、好きにならなければよかった。

こんなに苦しいなら…恋なんてもう2度としたくないよ…」


そう言って泣き続ける私に真の声が届く。



「そんなこと…言わないでよ。


藤堂先生のこと、好きになって良かったんだよ。

楽しい思い出…たくさんあるんでしょ?


だったら…好きになって良かったんだよ。

好きにならなければ良かった、なんて悲しいこと言わないでよ。


恋なんてしたくない、なんて言わないでよ。


辛いことも苦しいことも長くは続かない。

だから…そんな寂しいこと…言わないでよ、奈々ちゃん…」


真の声も、震えていた。


私のために涙を流してくれている人がいる。

そう思うだけで、少しだけ元気になれた。



優作さん。


本当に…ありがとう。


あなたに出会えて良かった。

あなたを好きになって良かった。


今はまだあなたを思うと涙が出てしまうくらい好きだけど…

いつか、あなたの話を笑ってできるくらい強くなります。


そして、あなたよりいい人を見つけて幸せになります。


だから…優作さん。

あなたも、幸せになってください。












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