職場内恋愛
俺は下に落ちていた視線を上に向ける。
京地の目はなぜか切なげで。
そんな目で俺を…見るな。
俺、悲しくなるだろ。
俺、せっかく泣くの我慢してるのに泣いちゃいそうだろ。
だから。
だから。
そんな目で…見るなよ。
「先生の傷に触れるようなこと、言っていい?」
京地は俺を真っ直ぐに見つめる。
「どうして…
どうして奈々ちゃんを止めなかったの?
離れたら辛いことは、もう分かってたことじゃないの?
ねぇ、先生」
俺は名簿を閉じ、机に置いた。
『…俺自身にも分かんない』
あのとき、
俺が止めていれば何かが変わっていただろうか。
あのとき、
俺が追いかけていれば別れなくてすんだんだろうか。
俺は…間違ってたんだろうか。
何も。
何も分からない。
だからこそ、今はその問題から目を逸らしたかった。