職場内恋愛





京地は真っ直ぐに俺を見つめ、言った。



「あたしは、逃げてなんかない。

でもイヤなんだよ。


今が楽しいから。

先のことなんて考えたら今が終わっちゃう気がして。


それが…イヤ…なんだよ」



『分かる、俺にも。

お前は逃げてなんか…ないんだよな。


ただ今を楽しみたいだけなんだな』


ホントは、分かってるんだ。

京地は頭がいい。


成績がいいとかそういう意味じゃなく、

いろんなことを理解するのが早い。


だから、分かってるんだ。


いつまでも楽しくいられるワケがない、ってことも

先のことを考えなくちゃいけないことも。


でもアイツは理解することを拒んでる。


前に進まなくちゃいけない。

けど、進みたくない。


ずっと、ずっと、ここにいたい。


俺にもそう思ってた時期はあった。


それでも進まなくちゃいけなかった。

そして俺は前に進んでよかった、って思える。


もしかしたら、俺の役目はそのことを伝えることなのかもしれない。








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