職場内恋愛





「あ、うん」


京地は我に返ったようにシャーペンを握る。



『お前…何見てたんだよ?』



「別に」


京地は俺の顔を見ようとはせず、黒板とノートを交互に見ている。




『橋野先生のこと、見てたろ?』

京地の手が止まる。


でもそれは一瞬だけで。

またすぐに動き始める。



「見てないよ、奈々ちゃんのこと。

ただ、たまたま視界に入った。
それだけのこと。」


京地はそう呟き、俺の目を見た。



『お前…なんか知ってんの?』


ふと思った。

さっきの言葉と言い、あの視線と言い、何か…いつもと違った。







< 99 / 425 >

この作品をシェア

pagetop