憂鬱な姫君 (姫シリーズVol.5)
「あ~」

騒がしい受話器の向こうに苦笑いした賢次だったが、やっと落ち着いた声が耳に入り、フッと声がもれた

「悪いね・・騒がしくて・・」

受話器の向こうでドアのしまる音が聞こえる

「相変わらずだな~」

姫花と潤也の様子が想像できて思わず笑ってしまう

「あ~ まぁ・・」

そんな賢次に廉も苦笑いだ

「で? ココの事か?」

と含み笑いのままの賢次に

「あ~ やっぱ、そっち行ってますか・・」

と廉の声が深いため息とともに届いた

「よくわかんねぇけど、Seattleの学校も辞めてきたとか言ってるけど?」

と賢次

「あ~ まじっすか・・」

そんな廉に

「ま、ここにいる分には何も心配することはねぇから、もうガキじゃねぇとは言わねぇけど、分別がつかないほど子どもでもねぇしな」

そんな賢次の諭すような話し方に

「まぁ・・」

と曖昧な返事しかできない廉

「どうせこっちに来るんだろ?」

姫花とは幼馴染だ

この先の行動なんて手に取るようにわかる賢次に

「流石・・ 明日一番のチケットをゴリ押しで取ってましたよ・・」

と廉

「了解」

そして、二言三言話し、携帯をオフにした賢次は、ドアの開く音に振り返った。


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